半導体レーザーを用いた根管治療(根の中の消毒治療)口腔外科専門医 インプラント専門医 山辺滋
半導体レーザーを用いた根管治療(根の中の消毒治療)
当院では根管治療に、半導体レーザーを使用しております
歯の中の神経を抜く治療の際の出血に対して、半導体レーザーは他の種類のレーザーと比較して特に優れています。さらに、殺菌効果が高く、神経内の温度上昇があまりないため、根の中でも安全性が確保できています。また、感染した根の処置においても、根の中にレーザーを照射することによって、細菌の減少、膿・出血の消失、歯をたたいた時の痛みなどの症状の軽減なども期待できます。半導体レーザーは弾性のあるファイバーで導光できますので他種レーザーより有利です。
また、当院の組織透過型の半導体レーザーは、歯の中や歯茎などを通過したレーザー光が根の先に到達することによって、口内炎に対する照射と同様、組織の治癒促進効果も期待できます。
症例・術式
接触型(ハードレーザー用)として先端作業部を円錐状に加工し、根の先の病巣や根の中の止血が期待できます。また、非接触型(ソフトレーザー用)として先端作業部をフラットに加工し、根の中の殺菌・乾燥や、根の先の組織の治癒促進効果を期待することができます。
術式1〔根の先の穴が小さめの時〕: 0.3mm径ファイバー先端を接触型に加工を施し、根の先で止め、出力3.0W連続波で、1秒照射します (根の中の止血・殺菌・乾燥)。非接触型に加工し、出力2.0W連続波にし、5mm/秒でチップを移動させながら、30秒照射します(根の中殺菌)(図1)。
術式2〔根の先の穴が大きいとき〕: 0.3mm径チップを接触型に加工し、根尖より1mmファイバーを出し、3.0W連続波、2秒照射します (根の先の病巣を破壊・蒸散+根の中の止血・殺菌・乾燥) (図2) 。
術式3〔根の中の管が細い場合〕: 0.6mm径チップを非接触型に加工し、2.0W連続波、5mm/秒移動で、30~60秒照射します(根の中殺菌)(図3)。
術式4〔膿の穴を形成していない根尖病巣〕: 0.6mm径チップを非接触型に加工し、頬側歯槽粘膜から約5mm離し、根の先方向に、2.0W連続波、5mm/秒移動で、30~60秒照射します(組織の治癒促進効果)(図4)。
術式5〔膿の穴を形成している根尖病巣〕: ポケット探針やゾンデで膿の穴から病巣を探し、深さの目安を立てます。0.6mm径チップを接触型に加工し、膿の穴から根尖病巣に到達させ、3.0W連続波で1秒照射、病巣の大きさによって、数回照射します。さらに、最後、に3.0W連続波、1mm/秒でチップを膿の穴から引き出します。病巣の細菌数減少、膿・出血の消失、膿の穴組織の治りがよくなります。
参考文献
1)西山俊夫監著:歯科用半導体レーザーの基礎と実践テクニック、デンタますダイヤモンド社、56-69、2006。
2)山辺 滋:歯科用レーザーにおけます半導体レーザーの位置づけ―基本的性能と効果の特徴、基礎的な適応症について、日本歯科評論、49-59、2007。