トップへ »

最近20年ほど、歯科インプラント治療の効能が知られるようになり、隣の歯を削らないですむインプラント治療を希望する方が増えています。今回、歯の根っこが折れてしまったことで根っこの先に炎症を起こし、抜歯しなければならなくなった大臼歯1本の代わりにインプラント治療を行い、良好に経過している症例を御報告します。

 約10年前、他の歯科医院にて下の奥歯にインレー(小さな金属)による治療を受けました。その後経過良好でしたが、10年経ち、咬んだ時に痛むようになり、頬っぺた側の歯ぐきが腫れたので、当院を受診されました。
検査の結果、歯の根っこの破折が疑われました。治療は、最初、歯根破折は不確定であったため、抗生剤を飲んでいただき、感染した根っこの除菌処置を行ったところ、肉ぐきの腫脹と咬んだ時の痛みは消えました。引き続き歯石除去や、ブラッシング指導を行ったところ、口腔衛生状態は改善し、歯周病の状態も改善しました。しかし、数か月して再度歯ぐきが腫れてきました。患者様に根っこが折れている可能性が高く、抜歯が必要なこと、抜歯後の補綴治療法として歯科インプラント、ブリッジ、および義歯があること、およびそれらの方法の利点、欠点を説明しました。その結果、この歯を抜歯し、抜歯後にはインプラントにて補綴することを患者さまが決められました。
この歯を抜歯したところ、やはり根っこは折れていました。抜歯した傷の治りは良好で、その後インプラント埋入手術を行ういました。下顎の骨には十分な縦の骨量があり、幅も十分ありました。
インプラントの初期固定は良好で、埋入3カ月後にハイブリッドセラミッククラウンを装着しました。

 上部構造装着1カ月後の経過観察時に特に異常所見はなく、その後は4カ月ごとにメインテナンスを継続しています。
メインテナンス時にはインプラント、上部構造、天然歯の異常の有無、および、周囲軟組織、歯周の清掃状態、炎症の有無などを検査し、1年に1回、レントゲン写真による検査を行っています。
 3年9カ月を経過した2013年2月には、インプラント体周囲軟組織に異常はなく、プラークコントロールも良好で、X線検査所見においても骨吸収ほとんどみられませんでした。また患者様は治療後、右側でも良く咬めるようになり、非常に満足しておいでです。
 従来、奥歯が一本なくなった場合にはブリッジによる補綴が一般的でしたが、インプラントによる補綴は健全な隣の歯を削らないですむという利点があります。Levineらによると、今回と同じような症例359本のに、ストローマンインプラントを埋入し、平均23ヵ月の経過で失敗は3本、99.2%という高い残存率を報告しています。
今回行った大臼歯1本がなくなった場合のインプラント治療は、両隣に在る歯の削合や荷重負担を回避することが可能で、有効な治療法であると思っております
20161003パノラマ.jpg
20161003パノラマ2.jpg
20161003 口腔内写真2.jpg

       参考文献
1) Levine RA、 Ganeles J、 Jaffin RA、 ClemⅢ DS、 Beagle JR、 Keller GW。 Multi-center retrospective analysis of wide-neck dental implants for single molar replacement。 Int J Oral Maxillofac Implants 2007; 22: 736-742。


トップへ »


PAGE TOP